ローリー・ニコルと再タッグ②

日本経済新聞
浅田、名振付師と再タッグ スケートに「新しい喜び」
配信日時:2015/10/1 6:30
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO92208300Z20C15A9000000/?df=2&dg=1

 「振付師ニコル」は「必ず花開かせてくれるけれど、時間がかかる。それを待てない選手も多い」と評される。クワンは小学生の頃から見ており、チャンもそう。明確なビジョンを持ってSP、フリー、エキシビションのプログラムを作り、2人を見事に成長させた。スケーティングがうまく、難解な曲も表現してみせるチャンだが、子供の頃はただ滑ること以外、全く興味のない時期があったという。

 ニコル 「何とか表現に興味を持てるようなプログラムを作ったものよ。チャンには深いエッジを持ったスケーターになってほしかったから、それが自然と身につくようなプログラムも用意した。クワンもそうね。『官能的で強い女性』になれるよう、計画的にプログラムを作った。カロリナ・コストナー(イタリア、12年世界女王、ソチ五輪銅メダル)も同じ。イタリアの小さな村から出てきた女の子が、どうやったら自信に満ちあふれた女性になれるか。アップダウンがあって10年近くかかったわね」
 「真央とは距離的に離れていたこともあって、理解を深めるのに時間がかかった。常にまったく体重を感じさせない軽やかさが真央の特長だから、それをどうやったら生かせるかは考えてきた」

151001-7-1.jpg
チャンはニコルさんに育てられ、世界チャンピオンにまで上り詰めた=共同

 「ノクターン」「チャルダッシュ」「幻想即興曲」「月の光」「愛の夢」「アイ・ガット・リズム」「メリー・ポピンズ」「スマイル」……。ニコルさんが作ってきた数々の浅田用プログラムは、軽さが生きるようにリズム感がはっきりしているものか、旋律がきれいな曲が多い。

 タラソワさんとは正反対だ。「仮面舞踏会(ハチャトリアン)」「鐘」「ピアノ協奏曲第2番(以上、ラフマニノフ)」「白鳥の湖(チャイコフスキー)」……。非常に力強く、ロシアっぽいプログラムが多い。

 10年近いコラボレーションのなかで、ニコルさんと浅田が1年間だけ全く一緒に仕事をしなかったのが09~10年のバンクーバー五輪シーズンだ。SP、フリーの2曲、エキシビションとすべてタラソワさんの作品だった。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO92208300Z20C15A9000000/?df=3&dg=1

 ニコル 「プログラムは作らなかったけれど、バンクーバーの年もずっと真央のことは応援していた。離れても真央が戻ってきてくれるのは、信頼関係だと思う。10年近く一緒に仕事をすれば、私のことを真央が分かってくれたろうし、信頼関係が醸成されていたとも思う。そういう関係があると、よりエネルギーがあって美しいプログラムが作れるものよ」
 「選手が毎年、様々な振付師のところに行くのは今は普通のこと。振付師はエモーショナルな人が多いから、最初はショックだったけれど、それも仕事の一部と思えるようになった」

 今年6月、9日間で浅田のために4つもプログラムを作った。最初は「ショー用の作品のために、そちらへ行く」と連絡があった。それが「試合に出るから試合用も2作品お願い」と言われて驚いていたら、浅田が1人でトロントまで飛び、レンタカーを運転してやってきたので、またびっくりさせられたという。

 おかげで2人だけの濃密な時間を過ごせた。4作品のうち3つは浅田のソロだが、1作品だけはトリオ用のプログラム。7月のアイスショー「THE ICE」で、バンクーバー五輪銅メダルのジョアニー・ロシェット(カナダ)、そしてコストナーと共演したのだ。

151001-7-2.jpg
今夏のアイスショーで共演した仲間と。左からコストナー、ニコルさん、浅田、ロシェット=ニコルさん提供

 ニコル 「真央がすごく特別な人間になっていくのを見ている気がしたわ。興奮したり、大笑いしたり……。2人で一緒に作品をこしらえていると、真央の素顔がどんどん出てきて。真央は10年間でいろんなプログラムを滑り、芸術的なベースが強固なものになってきたので、振り付けのプロセスにも興味を持つようになった。だから、洗練を表現するにしても様々なニュアンスを出せる。真央の表情や好きな動きをする姿にインスピレーションが湧いたし、いま思い出しても楽しい時間だった」
 「特に、トリオは真央の意見が強く反映されている。2人で嫌になるほど音楽を聞いたのよ。『これはいい曲だけどプログラムにはいまいち』『なんか違う』……。2人同時に『これだ』って叫んだ曲(ミサ曲『ベネディクトゥス』)を使った。真央はカロリナとジョアニーとの距離感をよく理解して、リンク全体から見えるイメージもつかんで作っていたわ。この作品は真央にとって転機になったと思う」

 今季も多くの選手のために「数えられないほど」プログラムを作ったニコルさん。試合でライバルとなるスケーターたちに、それぞれ作ることも普通だ。だから試合の応援に行くと、身を切られるような思いをすることも多々ある。

 フィギュアスケートはジャンプで失敗したら、相手もミスしない限り、挽回がきかない。同じ採点競技でも、1人で複数種目にチャレンジできる体操とは違い、フィギュアはソチ五輪から団体戦が始まったとはいえ、基本的に1大会で1種目しかメダルのチャンスもない。

 ニコル 「どんなに一生懸命練習しても落とし穴がある。トリッキーなスポーツだわ。だからこそ『常に完璧に滑れるわけじゃない』という事実を受け入れると、パフォーマンスって良くなるもの。真央も様々なアップダウンがあってそれは理解していると思うの。なのでパフォーマンスも良くなると思うわ」

 浅田を指導する佐藤信夫コーチは、「(芸術面の担当は妻の久美子コーチで)みんなが言うとおかしくなるから、極力タッチしないけれど」と前置きしつつ、「とってもいいプログラムで、それをきちんと表現できるように彼女が成長できていることは間違いない。ガンガン盛り上げてほしい」。

 「マダムバタフライ」の初披露は10月3日のジャパンオープン(さいたまスーパーアリーナ)になる。

151001-7-3.jpg
関連記事
スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
コメント:
パスワード:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
page back